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仙台地方裁判所 昭和43年(わ)409号 判決

本籍

宮城県石巻市大門二丁目一〇番地の四

住居

同県同市同町二丁目一番四号

水産加工業

水野武治

大正二年四月二八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官中村勲出席のうえ審理を遂げ次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役五月および罰金三〇〇万円に処する。

但しこの裁判確定の目から一年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは金五〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となる事実)

被告人は、石巻市大門町二丁目一番四号において、焼竹輪の製造鮮魚の冷凍加工、冷蔵保管等の事業を営んでいた者であるが、不況にあえて資金蓄積を意図し所得税を免れる目的で、経理係片倉照治に命じて昭和四〇年度および四一年度の売上、雑収入の一部を公表帳簿から除外し、一部架空仕入を計上しこれによつて得た資金を簿外預金とする等の方法により隠匿したうえ、

第一、昭和四一年三月一四日、所轄石巻税務署において、同署長に対し、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの昭和四〇年度における被告人の所得につき所得税の確定申告をするにあたり、実際の所得金額は二一、一〇〇、二六五円、これに対する所得税額は九、九九七、二〇〇円であつたにもかかわらず殊更に、同年分の所得金額は七五二、四二九円、これに対する所得税額は源泉徴収税額の控除があるため三、九〇〇円の還付となる旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正行為により、同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一〇、〇〇一、一〇〇円の所得税を免れてほ脱し

第二、昭和四二年三月一四日、所轄石巻税務署において、同署長に対し昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの昭和四一年度における被告人の所得について所得税の確定申告をするにあたり、実際の所得金額は二一、一八四、四二七円、これに対する所得税額は九、九七〇、三〇〇円であつたにもかかわらず、殊更に同年分の所得金額は一、二一三円、これに対する所得税顔は五四、七七〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額と右申告税との差額九、九一五、五〇〇円の所得税を免れてほ脱したものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書(二通)

一、収税官吏の被告人に対する質問てん末書(七通)

一、片倉昭治の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の片倉昭治(四通)および水野ふじ子(二通)に対する質問てん末書

一、川口正意の検察官に対する供述調書

一、川口正意作成の裏分取引の修正仕訳および総勘定元帳、裏分売上の調査表、固定資産減価償却の明細表と各題する書面

一、被告人および片倉昭治共同作成の上申書(三通)

一、梅野克昭作成の銀行調査書、預金および利息の調査書、割引債 および債 益の調査書、借入金および支払利息の調査書と各 する

一、長谷川松太郎、 高光、北島良一、 田吉人各作成の取引高および と題する書面

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の 計算書(自昭和四〇年一月一日至昭和四〇年一二月三一日)と題する書面

一、収税官吏の近江哲治に対する質問てん末書

一、押収しである四〇年分所得税確定申告書一袋(昭和四四年押第一二号の一)、四〇年分総勘定元帳一冊

(同号の三)、四〇年分補助元帳一冊(同号の五)、四〇年分 送品日記帳一冊(同号の七)、金銭出納 帳一冊(同号の九)、四〇年分 帳一冊(同号の一一)、四〇年分伝票一綴(同号の一三)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の 額計算書(自昭和四一年一月一日至昭和四一年一二月三一日)と題する書面

一、関戸茂、蒲生宗一、田中啓策各作成の取引高および決済状況源と題する書面

一、押収してある四一年分所得税確定申告書一綴(前同号の二)、四一年分総勘定元帳一冊(同号の四)、四一年分補助元帳(同号の六)、四一年分 送日記帳一冊(同号の八)、金銭出納帳二冊(同号の九および一〇)、四一年分売上帳一冊(同号の一二)、四一年分伝票一綴(同号の一四)

(法令の適用)

被告人判示第一および第二の各所意は、いずれも所得税法第二三八条第一項、第一二〇条第一項第三号に 該当するところ、所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科することとし、右は刑法第四五条前段の併合罪であるから懲役刑については、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条第二項により判示第一、第二の各罪所定の罰金額を合算し、その刑罰および金額の範囲内で被告人を懲役五月および罰金三〇〇万円に処し、同法第二五条第一項を適用して、この裁判確定の日から一年間右懲役刑の執行を猶予することとし、同法第一八条により右罰金を完納することができないときは金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐々木次雄 裁判官 宮島英世 裁判官 山崎健二)

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